背景設定等

 本編のみでも話が分かるように書くべきだとは思うのですが、どうも巧くまとめられなかったので、こちらにこっそりと背景設定などを……(汗)
 読まなくても話の筋はなんとなく分かるかもしれませんが、世界観や人物像のイメージを、手っ取り早くつかむためのヒントにご利用いただければ嬉しいです。



■ 世界 ■
 舞台背景は、ファンタジーと近未来的雰囲気の入り混じった異世界。
 魔術はほとんど出てきませんが、古代の技術によって生み出された「竜」が存在していたりと、少しだけファンタジーの匂いが漂っています。
 ただ今回の話は研究所中心なので、近未来的……というよりは現代の大学のイメージが一番近いかもしれません。



 物語の中心は、IZAP(アイザップ)という大海に浮かぶ研究所になります。
 遠い過去、周囲の理解を得られなかったり、倫理的に問題があるとして研究を認められなかったりした科学者達が連絡を取り合い、寄り添うように打ち立てたのが起源だとか。
 どこの国にも属さないこの特殊な研究機関は機密保持力が高く、友好関係にあるいくつかの外部研究所を除いては、ほとんど研究内容を公にすることがありません。



 IZAPの近くには、GALM(ガルム)という、これもまた国に属さない軍事機関があります。
 IZAPでの技術はGALMと取引される事が多く、この2大機関の存在が、特定の国の横行を抑える形となっています。

 発端は、とある生命科学部の学生の研究から始まります。
 彼、ネルソン・ロックフォードは、MU(ミュウ)というほぼ人と同じ遺伝子を持つ種と、緑竜とを掛け合わせ、新たなキメラを作成しました。
 (MU…主にIZAPで作られた、人に限りなく近い人工生命体を指す)
 (キメラ…同一個体内に異なった遺伝情報を持つ細胞が混じっている生物)

 今まで成功例の無かった緑竜とのキメラを初めて成功させた彼は、17歳の若さでその道の一人者となります。





 生まれたキメラはティエ・トルプと名付けられ、研究体ではあったものの、ネルソンの子供のような扱いで育てられました。

 ティエの基になったMUはネルソンの母に当たるため、ネルソンにとっても肉親のような思いがあったのかもしれません。





 ティエはネルソンの側で、5歳頃まで育てられました。
 けれどもその頃になると、そろそろティエを他のMUと同様に研究体として扱うべきだと言う声が、周囲の研究者から出るようになっていました。
 研究の成果物である以上、ティエの所有者はネルソンではなくIZAPであるため、その声にネルソンも次第に逆らう事が出来なくなっていました。

 ティエ自身は、そのことの重大さを認識できる年ではなかったのですが、もう一人の親である緑竜は、ティエの行く末を憂えていました。
 緑竜はティエに母のように言い聞かせると、共にIZAPを脱出する事を決めたのです。





 ある日、緑竜はティエを背にしてIZAPを飛び出しました。
 予めIZAPの空のどこをどう抜ければ逃げ切れるか、緑竜は調べ尽くしていたため、なんとかIZAPの追っ手を逃げ切りました。 ただその際、緑竜自身もかなりの傷を負ってしまいました。

 やがてその傷が悪化し……ついに緑竜はティエの側で亡くなってしまいます。
 けれども、泣き崩れて緑竜の側を離れようとしないティエに、一人の少年が声を掛けました。
 ルシャと名乗ったその少年は、ティエの気が済むまで静かに待ち、数日後にティエが口を利けるようになると、自分に付いてくるよう言いました。





 二人はまるで兄妹のように仲良く、旅を続けてゆきます。

 砂漠を渡り、海を渡り、山頂の町を越えて。

 時には命すら危ういような目に遭う事もありましたが、それでも互いを庇いあい、機転を利かせあうことで乗り切ってきました。

 ある時には、国から国へと薬を売り渡ることで稼いだり。





 また、ある時はGALMの軍医の助っ人に入ったりしつつ。


 一度だけネルソンと接触する事があったのですが、その時は残念ながら、ネルソンがティエに気付く事はありませんでした。
 (ネルソン自身、まだティエが無事だとは思っていなかったようです)







そのようにして、8年が過ぎたある日
ルシャが倒れました。


ルシャは元来、幼少時の体験により、体内に毒を持っていました。
その特異な体質を自ら利用して、薬の調合に利用したり
時には更に毒を飲んだりしていたのですが、
そんな中のある毒により、急激に体内が暴走を始めてしまったのです。

一旦そうなってしまうと手の付けようが無く、
ルシャを診たGALMの軍医も
「命には関わらないが、再び目覚める見込みがかなり薄い」
との判断を下しました。

 そんな絶望的な状況の中で、ティエはある情報を聞きました。

 「生命力が強く、細胞の適応力が桁外れである竜の心臓を組み込めば、この状況から抜け出せるかもしれない」

 実際に、竜の血や臓器を部分的に移植する事で、人の命が助かった例は、ティエもいくつか聞いていたのです。
 ティエは、自分の心臓をルシャに組み込む方法がないかと考えました。




最終的にティエが決めたのは、IZAPに戻る事でした。
自分の心臓をルシャに移し、かつ自分も別の心臓を移植してもらうためには
相応の技術と環境が無ければ不可能なのです。

ティエはIZAPに連絡を取り、自分の心臓をルシャに移植してもらうよう依頼しました。
自分を研究体としてIZAPに提供する事を、交換条件にして――





「Cinnamon」本編はIZAPに移った後のティエを中心とする話になります。

[戻る]